【特別対談】話題の不動産スタートアップTERASS江口CEO×イエシル川名

2019年に「TERASS」を起ち上げ、エージェント提案型家探しサイト「Agently」をリリースした江口CEO。イエシル参画にあたり、イエシル事業責任者川名と起業の経緯、不動産業界の課題と裏話、イエシルのアドバイザーサービスの魅力、リアル正直不動産のような取引の秘話や今後の展望を語った。

更新日:2022年05月31日

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イエシルコラム編集部

株式会社リブセンス

IESHIL編集部

東京・神奈川・千葉・埼玉の中古マンション価格査定サイトIESHIL(イエシル)が運営。 イエシルには宅建士、FPなど有資格者のイエシルアドバイザーが所属。ネットで調べてわからないことも質問できるイエシル査定サービスを展開しています。

この記事の要点
  • SUUMOにいたからこそ、物件ではなく「いいエージェント」が必要と感じた
  • イエシルの「中立相談」と「不動産会社の選定」サービスは素晴らしいと思った
  • TERASSエージェントにはノルマが無い。だから出来る正直な営業
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■江口亮介(左)えぐちりょうすけ/2012年にリクルートに新卒入社、SUUMOの広告企画営業として約100社以上の不動産ディベロッパー担当。その後、SUUMOの売買領域の商品戦略策定に関わる。2017年にマッキンゼーアンドカンパニーに入社、経営コンサルティングを手がけた後、2019年4月に株式会社TERASSを創業/ ■川名正吾(右) かわなしょうご/10年以上の不動産業界経験を経て、2015年リブセンスに入社、不動産透明化メディアイエシル立ち上げに合流。並行して「中立アドバイザーサービス」を企画・ローンチ。裏も表も全て話し、敏腕営業マンの紹介もできる。というスタイルが話題を呼び現在イエシルへの相談は年間1,000組を越える。

SUUMO時代の営業で挫折。経営コンサルでの学び。そして起業へ

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川名:イエシルへの参画ありがとうございます! いよいよですね。早速ですがこれまでの経歴を含めた自己紹介とTERASSを立ち上げた経緯をお聞かせください。

江口:新卒でリクルートに入社して、SUUMOの不動産売買担当でした。横浜湘南エリアで「SUUMOを使ってください」と企業にゴリゴリの飛び込み営業をしていました(笑)。その後は大手開発事業者さん向けの営業を担当。営業も好きなのですが作る方に行きたいと思いまして、次はSUUMOの企画部にいき様々な商品をプロデュースしました。
 SUUMOのあとは、少し海外で仕事をしたい、M&Aを勉強したいなと思いまして、外資系コンサルティング会社に転職。M&Aやマーケティング戦略を担当しました。3年目で30才手前となり人生を見つめ直したときに起業したいという思いが湧き上がってきて今に至ります。

川名:外資系コンサル時代に「起業したいな」と思ったんですね。

江口:はい。最初は新卒時代に営業として賞を獲って3年で起業!と意気込んでいましたがリクルートに入社して11ヶ月間一度も営業ノルマを達成できませんでした。思えばその経験こそが今ビジネスマンとして成長できた理由だなと感じています。外資系コンサル在職時に色々な人と出会い話をした結果、起業した方がいいのではと勧められました。

川名:周りからのアドバイスで起業したということですね。

江口:そうですね。色々考えつつ自分が一番好きで得意なものは不動産売買。不動産領域で起業しようと決意しました。不動産領域でのビジネスを考えると、アメリカの不動産マーケットは日本よりすごく進んでいて。不動産事業をオンラインで展開して、個人の不動産ブローカーがアドバイスしています。要はエージェントですね。日本でも流行っていくと思いました。様々な物・人のフリーランス化が進む中、不動産のフリーランス化を我々の力で進めていけるのではないかと。

川名:海外での成功がその後日本で根付く。というのは流れでもありますね。

TERASSを起業してから3年、早くもエージェントは150人に

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川名:実際にサービスをローンチしてから現在で3年程、感触的にはいかがでしょうか。

江口:まずエージェントの応募が予想以上です。毎月ものすごい数の応募がたくさん来ますね。ただ、我々は数よりも質を重視しています。良い人から買いたい。という消費者のニーズもあり質は譲れない部分です。良い不動産取引は良いエージェント探しから始まりますから。

川名:その考え方が御社の主軸ですね。

江口:賃貸と違って売買はより専門性が高い。専門的な部分はエージェントにしっかりサポートしてもらうべきです。質の高いエージェントに、より良いサポートをしてもらうことが基本です。ただ、家探しは良いエージェント探しと思っている消費者が少ないのが現状です。

川名:イエシル事業を継続してきてそれは感じています。だからイエシルはwebやメルマガ、面談等で一つひとつ丁寧に伝える作業をしています。特に日本は人ではなく、物件で探す文化。海外と日本の違いですね。

江口:そうです。不動産業界には物件情報が特定の会社に集まりやすい、物件を囲い込む(※)という風習もまだゼロにならない。難しい部分もあります。ただ少しずつ変えていくというチャレンジは面白いと思っています。最終的には”エージェント2000人到達”を、中期目標にしていこうと思っています。

※囲い込み:売主から物件を預かった不動産会社が、売主・買主の両者からの手数料を自社利益にするための悪習慣の1つ。自社以外の買主からの内覧や申込を拒むなどが主な行為で、売主にも不利益な行為である。


江口CEOが考える賢い不動産の買い方とは

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川名:2000人。結構な数ですね! 日本では良いエージェントがついたとしても、ほかで良い物件があればそちらで購入を検討する風習があると思います。秘めるリスクには気づいていない。江口さんは、買主にとって一番良い買い方というのをどう考えていますか。

江口:川名さんの言う通りですね。私は自分の考えを押し付けるつもりはなく、大手から未公開物件が出るとそちらに行ってしまう気持ちも分かります。

 しかしそれ以上に、自分が信頼できて付加価値が出せるエージェントと一緒に家探しをすることはすごく大事だと感じます。ポータルサイトで物件問い合わせをすると、物件を扱っている会社が接客するので、その物件をとにかく売りたい。物件の良い所しか言わない。本当はお客様の資金計画やライフプランを聞いて、どんな物件を買うべきなのか考え、物件選びを提案してエージェントと一緒に見に行って決めていくことが、最終的には良い買い方だと思います。

 両手仲介はあっても良いとして、そのために行われる情報を流通させない、いわゆる囲い込みはやはり良くないと思いますし、情報の透明性のための業法の改正、業務をもっと適正化していくことに私も働きかけていこうと思っています。

川名:なるほど。イエシルの不動産透明化プロジェクトに通じますね。


イエシル参画へのきっかけはアドバイザーサービス

川名:今回イエシルへの参画をなぜ決断されたのか、どこに魅力を感じたかなどざっくばらんに教えてください。


江口:以前からイエシルは見ていてその中でもお客様に対するアドバイザーサービスはとても良いと思っていたんですよね。「TERASSのエージェントが増え、より多くのお客様と出会って欲しい」と考えた時に、「Agently」だけだと物足りないという話になり、真っ先にイエシルさんがベストパートナーの1つだ。と。

川名:うれしい限りです。我々のアドバイザーサービスがいいなと思ったきっかけはありますか。

江口:まず中立な立場で相談できるということがやはりお客様にとってはものすごく貴重なんですよ。私や会社のメンバーも不動産会社と話すことがありますが、どうしても利害関係者になってしまいます。ビジネスなので仕方ないのですが…。

 本当に中立な立場で、アドバイザーサービスのように家探し・売却の相談できる人(※)って貴重だと思いますし、すごく素敵だなと思っています。お客様に対して時間をかけて業界の裏話をしたり、適した不動産会社の選定をする。そしてお客様の同意がご紹介に繋がるなんて、不動産会社としてはやる気しか出ない。素晴らしいなと思って。手間のかかることを良くやってるなと思っています(笑)。今日実際に見てすごく感動しました。

川名:ご理解ありがたいです。お客様が業界の裏情報まで知ることで、ご紹介のエージェントは悪いことができない。むしろしない不動産会社しか参画できないのでお客様が不利になる可能性が圧倒的に削減される。日本の不動産を取り巻く法規や業界慣習の中で、より良い取引ができる環境を構築できればと思っています。

江口:そう思いますね。お客様の伴走は我々に任せてください!

※イエシルではマンション売却・購入に関する無料相談サービスを提供している。業界経験10年以上の専門家から、中立なアドバイスを受けられるのが特徴。

売り時・買い時判断やあなたに合った物件の見つけ方、業界の仕組みまで、中古マンションの購入・売却のノウハウを徹底紹介。不動産会社ではなく、あなたのためのアドバイザーとして、中立的な立場からマンション売買のポイントをアドバイスします。

一括査定・先物掲載…消費者が不利益を被る不動産業界の闇

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江口:僕は、一括査定や、先物掲載(売主から売却の依頼を直接受けておらず業者の許可を得て掲載している物件)が好きじゃないんですよ。一括査定は不動産会社の生産性を下げていると思いますし、先物掲載も同じ物件を色々な不動産会社が掲載するわけです。全く理に適っていない。でも推進している会社はたくさんあって、良くないと思いますし、回り回って消費者が不利益を被っていることに怒りを感じています。

川名:一括査定や先物掲載の内情に関して、お客様は把握できないですね。

江口:売ると思ったら「まず一括査定だろう」という風潮は良くないと思います。購入にしても日本は住宅にかかるお金が大きいのに、満足度が低い国、もったいないじゃないですか。お客様が納得感を持って家を買える人が増えるように当社も頑張りますし、業界全体のプレイヤーがそういう視点を持てるようやっていきたいなと思いますね。

川名:お客様が知りにくいからこそ、不動産業界の闇や仕組みの部分をどう伝えていけるか、より良い道に伴走していけるかというのは、我々の命題でもあります。イエシルもどんどん利用してもらえるようさらに認知を高めていかないと。


リアル正直不動産!?「風、吹きましたか?」というお客様の声

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川名:会社の規模も大きくなってきたということで、正直不動産の続編を願いながら、次回のスポンサーというのはいかがですか(笑) 

江口:考えたいぐらいです。すごくいいドラマですね。 

川名:評判いいですよね。

江口:面白い! 実に面白い。正直不動産によって不動産の面白さを知ってくれた人もいると思いますし、業界の怖さを知ってくれたと思うので。ああいう正直な人が活躍するのはすごく面白いなと思います。 

川名:演出も結構エッジがきいてたりしますけど、御社エージェントとお客様で正直不動産のような出来事はありますか。 

江口:ありますよ。築60年位のすごく古い物件で、トランクルーム付き。ここまでは普通なのですが、そのトランクルーム、所有権が分かれていました。別の所有者が使うな、って言ったら使えない。これだけで売りにくいです。しかし色々なリスクがあるということを当社エージェントが事前に全て説明しました。多分他の不動産会社だったら、「まぁ、ちょっと所有権分かれてますけど」くらいで契約しちゃったかもしれません。
 エージェントがリスクも含めしっかりメリット・デメリットを説明した結果、信頼してもらえてその家は無事購入となりました。まさに正直不動産だなと思って。お客様から「風吹きました?」と言われた、という話を聞いています。(※正直不動産の主人公は風が吹くと嘘を付けなくなる)

川名:(大笑)

江口:この話には2つの意味があります。ひとつは、エージェントが正直に営業できる環境を作れているということ。ふたつめは、エージェントがお客様をしっかりサポートしたいと思えた、ということ。
 こう思える「質」のエージェントを抱えていくことが重要だと改めて感じさせられた事例でした。ノルマを持たず、かつTERASSの仕組みがあったからこその感動体験だったなと思うと「嬉しいな」と思います。

川名:なるほど、感動体験を作ることができた理由はTERASSでエージェントがきちんと働ける環境を作っているということですね。イエシル会員の方々が受けたいと思っているサービスと、御社エージェントのスキルセットとマインドセット、すごく合っていると思います。より一層頑張ってほしいなと思いました。

江口:頑張ります!

話題に上がった「正直不動産」の原作者と川名の対談記事はこちら

3年後のTERASS の展望と不動産業界の課題

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川名:最後になります。TERASSが起ち上がり3年経ちました。次の3年の展望はありますか?

江口:そうですね。直近で言うと、電子契約の解禁ですとか、次は多分不動産IDというところが広がってくると思っています。 でも不動産業界はまだ無駄が多すぎる。国がプラットフォーム(レインズ)を持っているからこそ、民間のイノベーションが阻害されている部分もたくさんあると思います。

 我々ができる範囲で、「家探しはいいエージェント探しから。いいエージェント探しから家探しが始まる」という世界感を生むために進み続けます。さらに家を買う際、ローン選択も分断されずシームレスにいける未来を作りたいと思っています。

 不動産エージェントがより効率的に働けて、より稼げる、お客様に時間を使える不動産取引を愚直にやりながら、札幌・福岡・他都市や全国展開していきたいと思っています。事業目標としては2000人のエージェントですね。2000人になれば、日本で一番エージェントを抱えている会社になれます。大手を抜いて、不動産仲介をリードできるようになりたいです。

川名:素敵な思想ですね!本日はありがとうございました。

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